2011/08/19

気になるもの



良い映画を観終わった後はしばらくの間その余韻にひたり、中々映画の世界から抜け出せません。先日観た映画もとても余韻の残る心地いい作品でした。美しい異国の街、そこで暮らす人々の何気ない日常、そしてその街に残る面影を探し求め彷徨い歩く青年。人々や街のざわめきはまるで優しい音楽のように軽快で心地よく流れる風景や光を受け止める木々がとても美しく映し出されていました。でも私にとってその映画の印象として真っ先に思い浮かぶものは、青年がさげていたなんてことのないショルダーバッグ。少し草臥れているけれど、彼にとっては身につけていることがまるで当たり前のようにとても大切なもののように感じました。何故青年の持つ鞄がそんなにも印象的だったのか。それは淡く色褪せた異国の街色とは対照的な色濃く鮮やか朱色が風景に入ることで、まるで1シーン1シーンが絵画であるかのように感じられたからかもしれません。どのシーンにも必ず映し出される何の変哲も無いその鞄は風景を映像美として見た時にとても重要な役割を果たしていたのです。芸術を重んじる国らしいとても美しい作品でした。それからというもの、目に映る日常の風景の中に小さなアートを見つけることがささやかな楽しみとなっています。

d'antan